2021.04.09

無印良品・銀座で開かれている「民藝―生活美のかたち展」。
大衆に向けて作られた温もりを宿す実用品のなかに
健全で尋常な美が宿っていることを再確認しました

月曜日はなぜか、医者の渡り鳥の日。この日も午前中は赤坂の整形外科(ヘバーデン結節の治療)、夕方は六本木の歯医者。その間に結構時間が空いたので、無印良品・銀座でやっている「民藝―生活美のかたち展」を見に行きました。

「民藝」は1925年に思想家で美術評論家の柳宗悦(1889~1961年)らが命名した言葉で、民衆のために作られた実用品を意味します。見られるためよりも、用いられるために作られた品。鑑賞用としての雅な逸品でなく、大衆に向けて作られた温もりを宿す実用品のなかに
健全で尋常な美が宿っていることを柳は見出しました。

 そして、「民藝」という新しい美の概念の普及と「美の生活化」を目指す民藝運動の本拠地として、1936年に東京・目黒区駒場に日本民藝館を開設。柳宗悦の審美眼によって集められた陶磁器、染織品、木漆工品、絵画、金工品、石工品、編組品など、日本をはじめ諸外国の品々約17000点が収蔵され、その特色のあるコレクションは今も高い評価を受けています。

 このなかから、今回は約65点を展示。展示を見ながら、素直に作った道具の形が愛らしいのはなぜかな?これを親しみやすさというのかな?と感じたり・・・。日常の道具は斬新な形をしていても、なんとなく人の身体に沿って柔らかい気がすると思ったり・・・。紙や竹、わらなどの自然物からものを生み出すという概念にエコロジカルを感じたり・・・。植物を素材とした道具や入れものはとても優しく、心ひかれるものがありました。そして、意外だったのは、アニミズムという信仰は民藝にも強く表れている、ということ。
では、なぜ、今回無印良品が民藝展を開いたのでしょう。現在の日本民藝館館長の深澤直人さん(プロダクトデザイナー)はこう言います。「無印良品のことを現代の民藝、あるいは現代の民具だという人がいます。もちろん製作手段の違いはありますが、製品に作者の名を記さないことや装飾をしない無我で誠実なものづくりの姿勢などに、互いの共通点があると思います。しかもそのものたちは静かに用に即した美を放っています。質素で豊かな真の価値を目指して1980年に設立された無印良品は、プロダクトによる民藝運動といえるかもしれません。人々が心の奥底で大切に思っている、平和で何気ない日常の生活に寄り添って行くこと。日本民藝館も無印良品もそのこころは変わらないと思います」

 あなたはどう思いますか? 私は賛成するところもあるし、そうは思わないところもあります。私は無印良品を好きでも、嫌いでもありません。何品かは無印良品のものも持っています。そのなかでいちばん好きなのは、冷蔵庫です。カタチもシンプルで主張しないし、使いやすい。またカンは大きさ違いで持っていて、米びつ代わりに、乾物入れに・・・と重宝しています。

 今回の展示会はこれからの無印良品の道しるべを見出し、確認するためのものだったような気がします。日用品が主張することなく、日々の暮らしのなかに溶け込んでいくような、無印ならではのものづくりを、もう一度再確認して、頑張ってもらいたいと思いました。会場には、銀座たくみや谷中・松野屋の民藝品や益子の濵田窯やイギリスのジョン・リーチの器も販売していました。5月9日まで開催していますので、お近くに行ったら、のぞいてみても損はないでしょう。入場は無料です。